手で植え、手で刈る田んぼの話 #1

暮らし

うちは農家ではないですが、近所の田んぼを借りて
「田カラ暮ラシ」という活動をしています。
山の田んぼから繋がっていく宝もののような暮らし。

田カラ暮ラシの活動は営農ではなく、ライフワーク。
部活のようにやりたい人が集まって、年間を通じて決ま
ったメンバーで大人も子どもも楽しんで参加していま
す。

みんなが長く楽しく続けられるよう、お金をかけずに
(機械はなるべく使わず、農薬、化学肥料もなし)
四季折々、山でわいわい遊びながらお米を作っていま
す。

2024年は1.5反ほどの田んぼを31家族でスタート。
月一回ほど、無理なく参加、無理なく作業しています。
穫れたお米は働いた分だけもらえるシステム。穫れ高を
作業時間に応じて分配します。
天塩にかけて育てたお米は掛け値なしの美味しさ!
自然と食べ物に感謝する気持ちが湧いてきます。

♦︎一年の活動の流れ
< 冬 >
まず田んぼの1年は冬から始まります。
キックオフとして、祈年祭(かみさまに五穀豊穣をお祈
りする)と昨シーズン育てた餅米でお餅つきをして味わ
います。

そのほか、大事な準備の時期。
BBQしながら、籾殻くん炭をつくったり、焚き火した
り(獣よけ、灰は肥料となります)畦を直したり、溝を
ほったり、獣害対策の柵を強化したり、圃場の整備をし
ます。やることありすぎ。
昨年はデッキを作りました。
子どもたちは秘密基地をつくるのに夢中です。(冬に限
らずですが)

< 春 >
カエルの卵やオタマジャクシ、アカハライモリ、植物な
ど自然観察も楽しくなってくる時期です。
種籾を苗代に蒔いて苗を作り始めます。
草取りが地味に大変。

当然、耕耘機がないので耕さず。
代掻きの効果があるのかは不明ですが、田植え前に泥ん
こ運動会を開催します。

大人になると汚れる経験がなくなり(最近はお子さま
も)、泥がつくことに抵抗を感じるのですが、それも最
初だけ。
一度汚れてしまえばもう何も怖くない。楽しくなって、
大人も子どもも泥んこで大はしゃぎ。
心はいつだって子どもにかえれます。(身体は年齢相
応・・・。)
泥の中めっちゃ動き回って、筋肉痛必至。

そして梅雨入り前に迎える田植えは、2日がかりの一大
イベント。
和装して早乙女になるもよし。
泥に埋まるもよし。
和太鼓演奏やキッチンカーも呼んでお祭り気分。
みんなが泥の感触を楽しみ、参加者みんなキラキラの笑
顔。
人も大いなる自然の一部であることを思い出しているよ
う。
(田植えの様子はまた別記事にて・・)

< 夏 >
田カラ暮ラシでもっとも過酷な時期・・・。
田んぼの中に生えた雑草を手で除草します。
山あいの田んぼでも真夏は水もお湯のようにアチアチに
なります。オタマジャクシもお気の毒、、。
さらに大変なのが草刈り。
平地の田んぼと違って、田んぼ面積の三倍近く法面なの
で、そこに生える草を刈ります。法面といっても崖に近
いところもあります。なかなか過酷です。

そんな中でも楽しむことを忘れずに。
山には竹がたくさん生えているので、竹を割って川の中
で流しそうめんをします。

大人はそれなりに大変だけど、子どもとワイワイするの
は楽しい時間。
川の水で冷やしたスイカを割って、川岸に一列に並んで
競い合って種を飛ばすのも普段はできないお楽しみ。
(毎年飛距離を更新中)

< 秋 >
稲を手で刈り、ハザ掛けして2週間ほど天日干ししま
す。(毎年、お約束のようにハザがこけます・・・)
天日に干すとお米が追熟して甘くなります。

稲刈りをした後、はぁ〜終わった!と思うのはまだ早
い。そこからお米にするまでが大変。

足踏み脱穀機と唐箕を使ったこともありますが、まあま
あ大変なのでハーベスタ&籾摺り機を知人にお借りして
います。
文明の利器があってよかった!!そこはバランスで。
(稲刈りの詳細はまた別記事にて・・・)

♦︎一年を通して
生き物いっぱい命溢れる田んぼで、季節をとおして米づ
くりに携わることでお米をつくることの大変さ、自然に
対する畏敬の念など様々な気づきがあります。
なるべく人の手でやることで、太古の昔から先人たちが
連綿と営んできた稲作や自然の中で生き抜いて今日まで
命を繋いできたエッセンスをすこし感じとることができ
るのではないかと思います。

日照りや冷害や、水害など災害に悩まされながらも、自
然の美しさと力強さに目をみはったり圧倒されてきたこ
とでしょう。
自然と神に祈ったり、恵みに感謝したことでしょう。
人の繋がり、平和というものがいかに得難き幸せかを噛
み締めて暮らしていたのではないかなと感じます。

何があっても絶え間なく続いてきたからこそ私たちの今
がある。
自然を敬い、祈りを捧げ、和を尊んできた先人たちの歩
みが、今も私たちの中に息づいている、そう感じます。

田んぼの活動とひと言でいっても日々の作業のなかで感
じることは数多(あまた)あります。
こういった経験も設計の仕事に生かされているなと感じ
ることがあります。
子どもたちの未来のためにも、必要以上にゴミを出さな
い、環境に負荷をかけず循環していくような、本当の意
味での持続可能な住まいを作っていきたいという思いが
強くなっています。

そしてこんな非効率な営みは、1家族ではとてもできま
せん。多くの仲間とともに楽しく活動を続けられるが有
難いなあと感じます。今年もたくさん穫れますように。

田カラ暮ラシ